本のコト

読書ファイル003「警察内部告発者」原田宏二 著


実名で警察の裏金問題を告発した元警察官:原田宏二氏の著書です。

北海道警裏金事件』の告発から1年後に出版された本で、告発の経緯やその後の顛末などが書かれています。

 

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さて、なぜ僕がこのようなお堅い本を手に取ったかというと、時間つぶしで寄った図書館でボ~~~と座っていたとき、椅子の横の本棚で偶然目に入ったのが本書を手に取ったきっかけです。しかし、借りて読もうと思ったのは、また別の理由があります。実はお世話になっている弁護士さんが、ガッツリこの事件に関わっていたためです。

 

原田氏が警察の不正を告発するに当たって、警察という絶対的な権力を持つ組織を相手に、一個人が反旗を翻すというのは相当なリスクがあることは想像に難くありません。それを法律の専門家として支えて代理人を務めたのが、札幌弁護士会の市川守弘弁護士です。

 

その市川弁護士ですが、環境法律家連盟副代表や、日本森林生態系保護ネットワーク事務局長を務められていて、法律だけでなく自然環境問題に関してもスペシャリストです。実は店主、以前から御槇の風力発電建設問題に絡んで、その市川弁護士に大変お世話になっております。何度も北海道から愛媛に来て頂いて、環境に関する講演や法律的な相談、はたまた行政調停の代理人を引き受けて頂いたりしています。

 

例えるならば、みなぎる正義感が服を着て歩いているような方で、身近で接していて感じるのは、知識も経験も覚悟も持ち合わせている本当に凄みのある方だなという印象です。『骨太の弁護士』と言う言葉がこれほど当てはまる方もそうはいないだろうと思っています。

 

そんな市川弁護士が過去に携わった歴史的な大事件がどんなものであったのか、見るからに凄いと思える人がどのような道を歩いてきたのか、その一片でも触れてみたいと思い読んでみました。

 

 

告発を行った元警察官の原田氏は、北海道警察で警察署長や方面本部長などを歴任した警察官。ノンキャリアの最高最高階級である警視長まで登りつめた役職者です。そんな上の地位にあった方の告発とあって、当時は大きなニュースになっていました。2004年の話です。

 

その当時、原田氏の告発に端を発し、全国各地の警察で告発が起こったことは、みなさんも記憶の片隅にあるのではないでしょうか。愛媛県でも現職警察官の仙波敏郎巡査部長による裏金の実名内部告発が起こり、一時期は愛媛新聞の紙面がそのニュースで持ちきりだったことを覚えています。

 

「警察が不正に手を染めて、どんなつもりで日々仕事してるのか!」

「もし交通違反で咎められたら言い返してやろうか!」

 

などと、意地の悪いことを考えていた記憶があります(反省)。当時の僕は20代前半のサラリーマンで、新聞を読みながら勝手に義憤に駆られておりました。

 

 

 

本書を読み進めると、いかに警察が組織的に裏金を作っていたのかというのがよく分かります。裏金作りに関与していなかった警察官は日本中にほぼいないのではないかとすら思わされます。(もちろん、手を染めなかった一部の芯ある警察官もおられると思います。)

 

警察の裏金作りは半世紀以上前には既に行われていたという、始まりの分からない歴史レベルの話のようです。新人警官にとっては自分が産まれる前から行われていた組織の慣例です。いくらそれがやってはいけないことだと分かっていても、それを拒む手段は現実的になかったんだろうと想像できます。

 

「正義の番人である警察がそのような不正を行うとはけしからん!」っていうのは、言うまでもない話なんですが、しかし、自分が同じ立場だったらと考えると、そう単純な話ではないだろうなと思わされます。もし自分が、鉄のピラミッド組織の最下層にいる一介の警察官だったとして、「連綿と続いてき組織の慣習」であり「先輩の誰もが通ってきた道」を、上司から命令されて拒むことが出来るものでしょうか?

 

警察は言わずと知れた究極の階級社会、部活の上下関係どころではないでしょう。「上からの命令」に逆らうことなんて到底出来ない訳です。一般企業と比べても、組織の意思に逆らうことは遙かに難しいことでしょう。裏金作りを拒んだら、閑職に追いやられたり不利益を被ったりということも起こっていたようです。しかも権力も有しています。

 

外から批判するのは簡単ですが、自分事として考えてみれば、良心を貫くことは果てしなく難しいことだろうと想像できます。子供たちが想像するような理想的な警察官像に近い心の持ち主ほど、思い悩んだのではないかと想像できます。良心の呵責に耐えられず辞めた名もなき警察官も、たぶんいることでしょう。

 

実際、「警察の不正」というパンドラの箱を開けた原田さんの元には、警察OBや関係者からと思われる批判の投書や嫌がらせ、圧力などが数々降り掛かったそうです。また、部下や同僚といった職場で築いた人間関係もその多くを失ったとのこと。勿論それは想定内のことであり、覚悟の上であったようですが、それだけの風当たりとや不利益を覚悟しなければ成し得ることではない行動なわけです。現職で告発した警察官は左遷されたり、免職されたりもしたようです。市川弁護士も、警察を相手にするに当たって友人知人から、身辺の安全に気を付けたほうが良いと忠告されたということですから、ただならぬ決意と覚悟が必要だということです。

 

 

長年にわたって多くの警察官が関与した警察組織内部の裏金問題は、「組織のルールや権威の下では、個人の良心は閉ざされ命令に従ってしまう」という、社会心理学で有名な『アイヒマン実験』を地で行くような話だと思います。そして、これは何も警察の裏金問題だけの話ではなく、広く日本の企業や組織を蝕んでいる慢性病なのだろうなと思われます。

 

昨今、続々と噴出している日本企業の数値改ざんや偽装問題、贈収賄や談合などの不正は、個々の職員が自分の利益のために行ったというよりは、『組織』を守るためであったり業務命令でやらされたものが大半でしょう。当事者である個々の職員は、それが倫理的にいけないことである認識としていたとしても、『組織のため』にはやらざるを得ないのです。

 

組織は個人のためにあるのか?

個人は組織のためにあるのか?

 

本末転倒になることがないように、願うばかりです。

 

また、組織にとっての最大利益は、社会にとっての最大利益とはなりません。組織の一員である以前に、社会の一員であるということを、忘れないようにしなくてはいけません。

 

すぐに社会が変わることはないかも知れませんが、組織のために犠牲になる個人が少なくなる社会が良いなと僕は思います。仕事とは、良心に従って行うものでありたいと、節に願うばかりです。

 

最後に。

 

告発を行った原田氏の元には、現職やOBを含め多くの警察官から、賛同や情報提供や感謝の言葉が沢山寄せられたそうです。「よくやってくれた!」と、長年の心のつかえが取れた方も多かったに違いありません。一個人として良心を持つ方々は社会の中に沢山いるのです。

 

原田氏のこの本を読み、また市川弁護士の背中を間近に見ながら、良心に従い勇気を持って行動できる人でありたいなと思う店主でありました。


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