イベントのコト

「せかクリがやりたいこと」#大木春菜の仕事展

似顔絵

はじめに


 本記事は『大木春菜の仕事展』を締めくくるイベントとして、2018年12月9日に行なわれたトークショー『せかクリがやりたいこと』をまとめた記事です。トークショーは、せいかつ編集室の大木春菜さんをメインスピーカーに、司会を福田百貨店の黒田が務めさせて頂き、春菜さんが運営するWebマガジン『せいかつクリエイト(以下:せかクリ)』を話の軸に据えて、仕事の流儀や裏話などを語って頂きました。

せかクリSC
〈こたつに入ってのまったりトークショー〉

 せっかくお話し頂いたせかクリの裏側を、出来るだけ詳しく書き記しておきたいと考えたために、少しボリュームのある記事になっていますが、「ライター」「編集者」「デザイナー」「フリーランス」「春菜さん仕事や生き方」といったフレーズに興味のある方には、得るものや共感ポイントが多い記事だと思います。トークショーで語られた春菜さんの言葉を僕目線で再構築してあるので、1・5人称のちょっと独自のスタイルの文章になっておりますが、楽しんで読んで頂けたら幸いです。では、春菜さんの簡単な紹介からスタート!

大木春菜さんの生い立ち


 出身は、愛媛県大洲市長浜町の山の中で、野山を駆け巡る少女時代を過ごします。田舎なので同世代は少人数、その中では比較的勉強が出来るタイプだったので、出来る子ポジションに収まっていたのだとか。中学時代は結構ないじめに遭っていたものの、自身はそこまで気にしない鉄のメンタルを保有。地元高校に進学し獣医を夢見るけれど、これまた比較的勉強が出来たがために、親や先生の期待を背負って公立の岡山大学の文学部に進学することに。県内では有名な地元のタウン情報誌『愛媛Komachi』の編集部に新卒で入社。

プロフィール
〈歩んできた道が今の春菜さんを形作っていると感じるプロフィール〉

 就職後は、厳しくも厳しい上司にビシバシ鍛えられたサラリーマン生活のおかげで、ライター&編集者として必要な技能を(泣きながら)叩き込まれる。もともと有していた鉄のメンタルが、鋼のメンタルに鍛造されたのもこの時代。あと、当時好んでいたスタイリッシュ路線から離脱し、現在のユルい作風が開花したのはこの時代の副産物。その後、独立して1度目のフリーランスとなるも、制作会社『ラフスタイル』にスカウトされて再び務め人になる。そこは“自由な社風”と“責任ある立場”が共存する絶好のレベルアップの場で、この時代にフリーランス活動に欠かせない《稼ぐ力》を会得する。出産を機に退職。再びフリーランスとなり、『せいかつ編集室』を立ち上げて現在に至る。二児の母であり、大木家の稼ぎ頭。

せいかつ編集室とは


 『せいかつ編集室』は、2012年に春菜さんが立ち上げ、後に旦那さんも加わって二人で営んでいるフリーの編集社。「編集の力でファンをつくる」をテーマとし、設立当初はHPのディレクションをしたり、ショップカードなどの紙物の制作を主な仕事とした。圧倒的なアウトプット量を誇り、「あ、これ見たことある!春菜さんの仕事だったんだ!」という感想を口々に聞くほど、愛媛県内の様々なショップやイベントの制作物に携わっている。県内では「犬も歩けば春菜さんに当たる」と言っても過言ではない…と僕は思っている。

作品写真
〈あのイベントも、このお店も、随所で見かけていた春菜さんの作品〉

 2年前くらいからは継続的な《情報発信》の重要性を強く感じ、活動の重点をそちらにシフト。これは、「チラシやWebサイトを作っただけで集客できる」と思っている人が多いと気付いたため。現在はSNSの代理投稿業務や、HPの更新業務など、継続的な情報発信の支援に力を入れている。それに絡んで、今回のトークショーの主題となるWebマガジン『せいかつクリエイト』が重要なキーワードとなってくる。まさに、せいかつ編集室がこれから力を入れて行くメイン事業であり、今後の展開から目が離せない注目のコンテンツなのである。では、ここから話は本題へ。。。

せかクリ誕生のきっかけ


 独立してフリーのライター&編集者として活動を始めた春菜さん。本人が「アウトプット量がとにかく多い」と言うように、もともとは一日に何件もの取材や打ち合わせを捌(さば)いていく“件数をこなすタイプ”の働き方をしていたそうです。仕事も軌道に乗って引く手あまた、そんなせいかつ編集室に転機が訪れたのは2016年のこと。

 その年に生まれた二人目のお子さんの心臓に生まれつきの病気が見つかり、月の三分の一は病院に通わなければいけないかも…という状況になったそうです。そこで、「これまでの働き方を見直そう」と夫婦で模索する中で、“件数をこなす”という仕事路線を見直すことになりました。さらに、旦那さんがサラリーマンを辞めてせいかつ編集室のマネージメントに就き、仕事と育児を二人三脚の体制に切り換えたのもこの時期のことです。

 そんな働き方改革をしていたせいかつ編集室の元に、仕事で一緒に活動していたデザイナーの石川智子さんから「助成金をGETしたから、大きいWebサイトを作らない?」というお誘いが舞い込みます。。。

せかクリ誕生前夜①収益をどう稼ぐ?


 折りしも、働き方を見直す1つの手段として「Webマガジンを作って行こう」と、思っていた矢先に訪れたWebサイト立ち上げの話。二つ返事で乗っかって、どのようなコンテンツを作るかの構想を練ることになりました。まず考えたのはお金のこと。

セカクリ
〈二人で徹底的に話し合った〉

 その頃はまさに、全国で『地域メディア』をみんなこぞって立ち上げている全盛期でした。そのようなサイトの多くは、情報数を集めるために無料で取材を行って「PV数を稼いでアフェリエイトでマネタイズする(…簡単にいうと、Webサイトの閲覧数を増やしてオンライン上の広告費で収益を得る)」というパターンが主流でした。もしくは、行政の事業として豊富な資金を得て大々的に運営するパターンのいずれかでした。

 しかし、件数をこなす働き方を見直そうとしていたせいかつ編集室にとっては、数をこなす方向性は真逆であり、受け入れがたいものでした。その上、家庭を支える屋台骨となる仕事ですから、“PV数”という不確かな要素に頼るバクチを打つ訳にもいきません。また、助成金を受けるという方法も、活動の自由度が縛られてくるため「本当に自分たちがやりたいこと」が、出来なくなる懸念がありました。そのため、Webサイト立ち上げのきっかけだったはずの助成金を利用する手段も除外しました。

 そうした話し合いの結果、一般的に王道と言われる稼ぎ方とは必然的に距離を置くこととなり、“自分たち”はどのように稼ぐかと考えて抜いた末に、「クライアントから直接お金を頂いて記事を書く」という現在のスタイルに行き着きました。

せかクリ誕生前夜②コンセプトは?


 収益構造に続いて、Webメディアとしての立ち位置も検討が必要でした。他の似たような地域メディアと同じことをしても意味がありません。「私たちだから出来ることは何か?」「私たちがやりたいことは何か?」を突き詰めました。せかクリのコンセプトを考えるに当たっては、「私のお客さんは何を望んでいるのだろうか?」と深く問い直しました。その時に役立ったのが、長年いろんな媒体で取材してきた中で感じていたある違和感でした。

 それは、「取材されるお店は決まっている」という事実です。例えば、郷土料理を扱うお店や観光客ウケするようなお店、情報誌のネタとなりやすい業態のお店は、メディアに取り上げられやすく露出が多くなります。露出が増えることでお店が流行り、さらにメディアに取り上げられやすくなる…という循環で、流行るお店はドンドン流行っていきます。一方で“そうではないお店”は、そもそもメディアで紹介されることがなく、実力があって良いことをしていても、集客に苦労しています。そのような現実を見るにつけて、そういうお店の役に立ちたいという想いが募りました。

Komachi時代の雑誌
〈過去の様々な取材経験が今に活きる〉

 せいかつ編集室がもともと、「実力があるのに集客に苦労している」というタイプのお客さんが多い傾向にあったのも、そういう想いが根っこにあったからかもしれません。そのため「私のお客さんは何を望んでいるのだろうか?」と考え抜いた末に行き着いたのは、「私のお客さんの一番のニーズは《知って欲しい》というものだ」という答えでした。

 そうしてせかクリは、「良いことをしているのにメディアに拾って貰えないお店の受け皿になりたい!」という、ライターとしての情熱を注ぎ込むWebサイトになりました。

せかクリ誕生前夜③アウトプットの形


 Webサイトとしての収益構造と方向性が定まれば、あとは具体的なアウトプットをどのような形にするかを決めるだけです。そこで役立ったのが、それまで引き受けてきた“SNSの影武者”の仕事でした。それは、依頼先の企業からfacebookのアカウントを借り受け、取材した内容をもとに月に1回記事を代理投稿するという業務でした。そして、その仕組みを知っている友人から言われていた言葉が大きなヒントとなりました。

 それは、「本当に良いと思って書いている記事と、ネタがない時に仕事と割り切って書いている記事は、その温度差が読み手には伝わっているよ。」という指摘でした。自分がすごく良いと思って書いた記事は、“いいね”やコメントの数がすごく多かったけれど、思い入れのない記事の反応が悪いことは、自分でも薄々気付いていました。その時の、「自分の本当の気持ちが入っていなければ、読み手の行動を促すような良い記事は書けない。」という気付きがあったため、せかクリは「私が100%自信を持って勧められるという記事しか書かない!」と決めました。

せかクリの仕組み


 フタを開けてみれば、目先の助成金に頼らず…ちまたで主流の広告収益にも頼らず…自分たちが本当に良いと思ったお店や人だけを…ライターの想いを載せて世の中に発信する…という、なんとも尖った方針でスタートした『せいかつクリエイト』。春菜さんたちはこのサイトを一言で《ブランディングマガジン》と表現します。

せかクリSC
〈せいかつクリエイトのマガジン〉

 改めて具体的な内容を説明すると、企業や店舗やアーティストといった様々なクライアントから依頼を受けて、読者にその“魅力”と“世界観”を伝える記事を作成するのが主な仕事です。現在の仕組みは、「1記事いくら」でクライアントから直接代金を支払って貰う形になっており、基本的には4回分を1セットで契約するスタイルを取っています。

 なぜ4回1セットになっているかというと、1記事だけでは読者に店名などを覚えて貰えずに一過性のものとなりやすいためです。読者の頭に残らなければ、クライアントがお金を払って記事を頼んだ価値が薄らいでしまいます。繰り返し波状的に発信することで、読者の認知度を確かなものとすることを狙っています。そこまで視野に入れているのは、ただ記事を書くだけではなく、実際に読者が行動を起こし《結果に繋がる》というところまで重視しているからです。

 また、せかクリは《ブランディングマガジン》という基本コンセプトがあるので、単にお金を貰ってクライアントの話をそのまま記事化するメディアとは違います。少し大げさかもしれませんが、《クライアントが持っている潜在的な魅力を“消費者目線で発掘する”》ということと、《消費者が求めてる潜在的なニーズを“クライアント目線で提案する”》という両方を行っている訳です。少し堅苦しい表現だったので分かりやすく例えると、“見ず知らずの二人の特徴を見抜いて、見事に縁結びをする凄腕の仲人のおばちゃん”というイメージを思い浮かべて貰うと、理解しやすいのではないでしょうか。それを、自分たちが得意とする“デザイン”と“言葉”のチカラを用いて、Webマガジンという手法で行っているのです。

 実際、「ここはこうした方がもっと良くなる!」と感じたときは、そのことをストレートにクライアントに伝えるようにしているそうです。「お互いに意見を磨き合った上で載せることを心がけている」と春菜さんは語っていますが、きっと“磨き合う”という言葉の奥にある真剣なやりとりを経て、ブランディングがなされて行くのでしょう。つまり、せかクリは《ブランディング》というコンセプトを有することで、他の一般的なメディアとは違う場所に立っているのです。

 そんな独自方針を打ち出しているせかクリですが、お客さんから「記事を書いて欲しい」と依頼されるケースよりも、自分から「記事を書きませんか?」と営業して受注するケースの方が圧倒的に多いのだそうです。なぜでしょうか?

クライアントは一本釣り


 それは、せかクリというWebサイトを、「すごく良い活動をしているのに“発信だけが足りない”と感じた相手の、魅力を伝えるお手伝いをするWebマガジンにしたい。」という春菜さんの想いがあるからです。そのようなお店や人を自ら発見したときに、「掲載してみませんか?」と一本釣り営業をかけて行くスタイルが、今は主流になっています。

 また、春菜さん自身の「これからは好きな人と仕事をして行きたい」という働き方への想いも関係しています。そうすることで、精神的に良好に仕事が出来ることや、コミュニケーションが円滑に取れるという良さがあり、そして何よりも、最終的な成果品の質に繋がるという良さがあるからです。

 これは、先ほどあった「私が100%自信を持って勧められるという記事しか書かない」というせかクリの方針を貫くものです。せかクリは、「私の好き」を発信することに価値があり、「私の好き」が質を担保するメディアとなっています。すると言わずもがな、紹介するモノやヒトとフィーリングが合うことが大前提となって来ます。ですから、自分が気に入ったお店や人に対して営業をかける方法が、結果的にクレームや不具合が生じにくく、良い仕事に繋がる率が高くなるということです。

 もちろん、相手方から「やって欲しい」と依頼されるケースもあります。ただ、依頼を受けた場合でも、何度かヒアリングを重ねた末に結局やらなかった…というケースも、結構あるようです。

大切なのは、時に断る勇気。


 相手とフィーリングが合うかどうかは、ある程度話を深めてみなければ、見極めるのは難しいものです。しかし、ある程度まで話を重ねた段階でお断りを入れるのは、そこまで築いた関係にヒビを入れることにもなりかねず、難しいようにも思えます。その点、「メンタル的な部分でプレッシャーが生じないのだろうか?」と疑問に思ったので、春菜さんに質問してみました。

 話を伺うと、実際これまでに依頼を受けながらお断りをいれたケースとしては、ヒアリングしてみたら「意外と中身がない」と感じたり、相手から求められる成果(主に集客の理想)が大き過ぎたり、お互いのフィーリングが合わなかったり…といったケースがあったそうです。そういう場合は、何度かヒアリングする内に「アレ?」と違和感が生じてくるそうです。その時には大抵先方も「アレ?」と感じていることが多いようで、どちらともなく「終わりにしましょう」という話になるそうです。

 つまり、フィーリングが合わないというのは一方的なものではなくて、双方が感じることなのでしょう。ただそう感じた場合でも、一般的には仕事と割り切って続けてしまう人が多いかと思います。そこを躊躇わずにお断りを入れるには勇気がいりますが、結果的にはお互いにとって最良の判断になる事の方が多いということを、心に留めておきたいところです。

みずごころ
〈春菜さんが発行するリトルプレス「みずごころ」〉

 せいかつ編集室が掲げている「自分の感性と合うクライアントと仕事をする」という方針は、多くのフリーランスの方が理想とする働き方だと思います。ただ、それを実現するためには、来る仕事を無選別に引き受けていては、結果的に自分たちのブランドがボヤけてしまったり、成果物の質を落としかねません。それに、精神的な面でも消耗してしまいます。せいかつ編集室の場合は、自分たちの基準に照らして、必要な時にはズバッと断る決断をすることで、理想とする働き方を得ると共に、仕事の質を確保しているのだと感じました。

 このように、自分の会社や成果物の質をより高めていくためには、《フィーリングの合うクライアントと上手に巡り会う仕組み》が重要になってきます。春菜さんの話を伺っていると、せかクリはそのための仕組みとして、いくつかの《フィルター》が効果的に働いている姿が見えてきました。

質を高めるフィルター


 まずは「高くもなく安くもなく」という金額設定が、フィルターとして有効に機能しています。どういうことかというと、金額が高すぎるとすごく大きな効果を求められて重荷になりますし、安すぎると誰でも来てしまうので大変なことになりますが、そこが現状の働き方とサイトのコンセプトに対して、バランスの取れた丁度良い金額設定になっているそうです。

 また、過去の作品もフィルターとして機能しています。大抵のお客さんは過去の制作物を見た上で依頼をしてくれるので、依頼する段階である程度こちらのアウトプット像をつかんで貰っており、「イメージと違う」という揉め方は少ないとのことです。「やっていることを今はバンバン公開しているので、自然とフィーリングの合う人が集まって来ている」と春菜さんが語るとおり、自分の作風やスタイル、過去の作品などを積極的に公開することが、結果的に相性の合うクライアントと自分を結びつけてくれるフィルターとして機能しているのです。その点に関しては、稼働年数の割りに仕事のアウトプット量が多い春菜さんだからこそ、より良好なマッチングが起きやすい環境が整っていると言えるのかもしれません。

過去作品
〈過去の作品が自分を紹介してくれる〉

 そして、見逃せないのが『配偶者フィルター』です。旦那さんと一緒に活動しているため、「何か引っかかるな」と感じるときは、旦那さんに相談して判断を仰ぐそうです。そこで「やめよう」と判断されることもしばしばあります。また、クリエイターにありがちな「見積りを安くしてしまう」という問題に対しても、旦那さんに相談して決めることで、弱気や情に流されることなく、冷静な値付けを可能にしています。そもそも、「夫と一緒に仕事しているので相談して決めます。」と伝えることで、クライアント側も「旦那さんも一緒に働いている」という体制を見越して、金額面の覚悟してくれることが多いそうです。

 確かに、そう言われて自分の経験を振り返ってみると、仕事を依頼するときや逆に見積りを提示するときに、相手の経済的な状況や組織の体制などを、何となく想像しながら受発注している気がしないでもありません。「どれだけのものを支えなくてはいけないか」という体制を、外部から見えるようにすることは、意外と大事なことなのかも知れません。

《私の主観》が最強のツール


 ライターとして実績を持つ春菜さんに、《記事を書くコツ》を尋ねてみました。すると意外なことに、「記事を書くことに自信は持っているけど、必ずしも文章を書くのが上手いという訳ではない。」という回答が返ってきました。「私より上手に文章を書ける人は沢山いるし、私は誤字や脱字なんかも多い方だと思う。ただ…」と、それに続く言葉の中に、せかクリの本質を表す言葉が語られました。「ただ…私は感動したことを感情を込めて書くのは得意!」と。

 せかクリの大きな強みとして《私の主観》があります。営業の段階からクライアントには、「完全に私の主観で書きますけど良いですか?」「主観で書いた方が最近の時代に合っていると思うけど良いですか?」と、許可を貰うようにしています。そうすることで、自分が良いと思った気持ちや、感動した感情をストレートに載せて書くことが出来るため、結果的に良質なアウトプットになりやすいのです。クライアントにも「そういう見方があったのね」という感じで、好意的に受け止めて貰えることも多くあります。

 さらに、《私の主観》で感動したポイントを表現することの利点として、情報が間違っていない限りは、大きな修正が入ることが少ないという点も挙げられます。基本的に個人として感動した気持ちを表現するので、それに対して修正が入ることがあまりないのです。修正が少ないと言うことは、手戻りによるロスが生じ難いということです。このことは、後述する《スピード》と《量》が強みの春菜さんにとって、多大なるメリットを産んでいます。

手帳
〈自分が愛用しているオススメの手帳は、仕入れて販売している〉

 ただしこの《私の主観》を武器とする場合は、“良いと感じるポイントの質”=“目利きがしっかりしていること”が重要になってきます。春菜さんの場合は、多くの媒体で取材に携わってきた経験を有することで、その目利きの部分に優位性があって、そこが真価を発揮できる絶好のフィールドなのだと思います。

 あとは、内から溢れる“私の感動”を表現するだけなので、それは筆の速さに直結することとなり、修正が少ないことと相まって、《スピード》と《量》という強みを最大限に引き出す仕組みになっています。

 この仕組みは、春菜さんのように情報インプットの量に自信のある人にとっては、非常に効果的な方法だと思われます。幅広い業種に精通していなくても、自分の専門や得意とする分野があれば、そのフィールドにおいて十分に応用できる手法ではないでしょうか。

強みは《スピード》と《量》と《感情》


 現在せかクリの記事は、画像加工やライティングも含めて1記事3時間程度で書き上げているそうです。それを聞いて僕は正直「早っ!」とビックリしたのですが、今後はさらに《早い媒体》を意識してスピードを上げていくというのだから驚きです。「間違えたらどうしようとか、こだわりたいなというやり方をすると、すごく時間がかかってしまう。それよりも《スピード》と《量》で勝負したい」と春菜さんは語ります。

 実は今回『大木春菜の仕事展』の展示を見たお客さんから、「イラストがほとんど一発書きですね」という言葉を頂いて、春菜さん自身も「本当にその通りだな」と再認識したそうです。「基本的にイラストは一発描きを心掛けているし、絵日記も一発書き、記事はさすがに一発書きではないけれど、一発書きのつもりで書き上げている。」というのですから、かなり徹底しています。もちろんそれにも理由があって、気合いを入れすぎて時間をかけるよりも「熱量のある内に一気に書き上げる」ということを重視しているのです。

原画
〈イラスト原画などは基本一発書き〉

 現在はSNSでの情報発信が主流の時代であり、シェアやリツイートで情報を拡散して貰うためには、みんなが熱いうちに投稿することが一番大事だといいます。「とにかくスピード重視で下手でも良いから一気に書き上げて数を出し続ける」というのが、今の時代に文章を書くコツだそうです。それに、時間をかけてまとめられたすごく上手な文章をよりも、多少下手でも感情が伝わってくるもの、本人の熱量が伝わってくるものの方が、SNSで伝わりやすい傾向にあるという理由もあります。

SNSとの相性


 つまり、春菜さんが得意とする「感情の込もった記事を素早く、数多く発信する」というスタイルは、このSNS時代の潮流に乗って、大きな強みとなっているということのようです。それだけに、「SNSでの自分の発信力を高めていきたい」と春菜さんは野望を語ります。

 なお現在、春菜さんが利用しているSNSは以下の3つです。それぞれの性質に合わせて使い分けています。

facebookは、主に県内ネットワークに向けてビジネス用途で使用。

Twitterは、全国のネットワークに向けて。気楽に何でもタイムリーに発信出来る。

Instagramは、情報の統一感を重視して、量より質で勝負。

やはり、情報発信のためにSNSを上手に活用することは重要であり、自分の強みとSNSの特徴をリンクさせて上手に効果を発揮させることは、多くのフリーランサーにとって必要なスキルになってきています。

クライアントの声


 実際に、せかクリの記事のライティングを依頼された方々がどのように感じているかは気になる所です。そこで、いくつかの事例を紹介して頂きました。

 奥道後温泉の記事では、最初単発だったものが記事の集客効果を評価されて、毎月の連載契約を頂けるようになったそうです。大きな理由として、SNS経由でモニターを募集した際に、即座に定員を上回る申込みを集められたという、春菜さんの発信力を評価されたそうです。もう1つは、せかクリに記事を掲載したことで、前年と比較して売上がアップしたのと、SNS上での奥道後の投稿が増えたことを評価して頂いたそうです。

奥道後温泉
〈記事でお客さんが実際に足を運んでくれる〉

 長くお付き合いをさせて頂いている下着屋さんのケースでは、せかクリに載せ始めてから「それまで見かけない属性のお客さんが増えた」という感想を頂いています。以前は少なかった二十代・三十代の若いお客さんが増えたそうです。そして何より、「質の良いお客さんが来店されるようになった」という言葉を頂いています。

 どちらにも共通していることは、ただWeb上の記事を読まれるだけに留まらず、実際に店舗まで足を運ぶお客さんを多数生み出しているという成果が出ていることです。正直なところ、せかクリ自体はまだ大声でアピールするほどのPV数があるメディアではないですし、SNSのフォロワー数もインフルエンサーと言えるほど多いわけではありません。けれども、質の良い感度を持つ人たちとのネットワークを築いているために、情報を発信すればお店まで足を運んでくれたり、商品を買ってくれたりといった《実際に動いてくれる質の良いお客さん》と多く繋がっているのです。

 よく知人や友人から「どこがオススメ?」と聞かれることが多いそうです。それは、春菜さんがいろんなお店や人の情報をよく知っていることを、周りのみんなが認識しているからです。つまり、大木春菜さんという個人が持つ情報量と質に信頼を寄せる人が沢山いるということです。だからこそ、集客行動に繋がる情報発信が可能になっているということです。

 一般的には、どれだけ記事の閲覧数があったかという“PV数”でWebメディアは評価されます。しかしせかクリの場合は、PV数やフォロワー数がそこまで多くなくても、クライアントが本来求めている“お客さんが行動を起こす”という、最も重要な価値を生み出すことに成功しています。例えるなら、『打席数は少なくても打率は高い』というのが、春菜さん及びせかクリの持っている強みなのです。

 

最終目標「私が媒体になりたい」


 春菜さんは「最終的には私自身が媒体になりたい」と夢を語ります。それは、るるぶやkomachiといった情報媒体に、自分自身がなるということです。そう思うようになったきっかけは、ある方が春菜さんの編集者としてのカラーを次のように評してくれたから。

「色で例えると透明だね。白だと濁るけれど、透明だとその色に染まることなく伝えられる。」

 その言葉を聞いた時、嬉しい気持ちと共に「私は媒体になろう」という想いが芽生えたといいます。そんな春菜さんにとって、今のライターや編集者という仕事は正に天職だといえるでしょう。また、『せいかつクリエイト』というWebサイトを得たことで、自分の個性を最高に発揮できる大海に漕ぎだしたかのようにも感じます。今の春菜さんを見ていると、「自分の望む人生を実現するために、自分が最も活躍できる場所や環境を自ら選び取っている」と感じるのは僕だけではないでしょう。春菜さんの「限りなく透明に近い主観」を通して、これからどんな言葉が紡ぎ出されていくのか?また、生きる情報媒体としてどのように成長を遂げるのか?今後の活動にぜひ注目して頂きたいと思います。

私の机
〈これからどんな仕事がうみ生み出されるのか〉

 最後に、春菜さんの言葉を紹介して終わりにします。それは、長浜の山の中で生まれ育った自分の半生を振り返って紡ぎ出された言葉です。

「私は幼い頃から常に、小さい世界のお山の大将で育ってきた。けれど、今はそれで良いと思っている。私より文章や絵が上手い人は沢山いるけれど、私には私が必要とされる山がある。いま住んでいる愛媛という小さなお山の中で活躍できるなら、私にはそれが良い。」


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