イベントのコト

『オンラインでは絶対に言えない話』【後編】 #大木春菜の仕事展



はじめに

本記事は『大木春菜の仕事展』のオープニングイベントとして、2018年12月2日に福田百貨店にて行なわれたトークショー『オンラインでは絶対に言えない話』をまとめた記事の【後編】です。【前編】をご覧になられていない方は、先に『オンラインでは絶対に言えない話』【前編】をご覧下さい。

トークセッション後半

●パネリスト紹介

パネリストは、“いいものを伝えたい”という想いが共通点の以下の3名です。

市毛友一郎【メルカドデザイン】 (以下:いちげ氏)

内子町在住のフリーデザイナーさん。東京から愛媛に移住。Twitter界隈で愛媛のインフルエンサーとして活躍中で、多くのクリエイターにとって頼もしい存在。

大木春菜【せいかつ編集室】 (以下:春菜さん)

松山市在住のフリーライター&編集者さん。今回の『大木春菜の仕事展』の主役。愛媛県内で数多くの仕事をこなす。二児の母であり一家の大黒柱。

黒田太士【福田百貨店】(以下:店主)

宇和島市御槇の古民家よろずや店主。元建築士の経験を活かして、デザインやWeb制作を行う。福田百貨店でイベントなども企画。この記事のライター。


【後編】質疑応答について

前半のトーク終了後に、会場の皆さんに書いて頂いた質問を元に、パネリストに答えて頂きました。質問の後半になるに従って、パネリスト3人の回答も次第に熱を帯びていきます。実は今回のトークショーで、パネリストそれぞれの本音や核心に迫る話が語られたのは、こちら後半パートの方だなと感じながら、当日も司会をさせて貰っていました。3人の息遣いまで伝わると良いなと思いながら書かかせて頂いた後編です。ではどうぞ!


Q1.一日のタイムスケジュールを教えて下さい。

春菜さんの一日

基本的に4時起きです。6時半に小学生の息子が起きるまでの間は、手帳を書いたりブログを書いたり、自分のためのアウトプットの時間に充てています。その後、下の娘を保育園に送る9時までが、朝の家事の時間です。それ以降が仕事の時間で、ほとんどの場合が打ち合わせや取材で外に出かけて、17時くらいに帰宅します。家事は旦那さんと半々ぐらいですが、娘が保育園から16時半頃に帰ってくるので、それ以降に仕事をするときは、膝の上に乗せてあやしながらイラストを描いたりパソコンを打ったりします。夜ご飯を18時半から19時くらいに食べて、忙しいときはまた膝の上に子供を乗せて仕事をします。22時頃には床につきたいなと思っていて、そうすれば22時から翌朝4時までの6時間睡眠が取れるので理想的なんです。でも思い通りの時間に寝られないことも多いのですが。。。

店主の一日

僕はあまりにも日々のパターンがバラバラ過ぎて、これだというスタイルはありません。福田百貨店の営業日には朝10時に店を開けるので、それに間に合うように起きて、日中は店番をしながらパソコンで仕事をしています。子供を幼稚園などに預けずに家で育てているので、店番しつつ、仕事しつつ、子育てしつつ、全てが混合した時間を過ごしているという感じです。ただ、デザインや文章を考えるようなクリエイティブな作業は、子供がいて賑やかだとなかなか進まないので、夜中にやったり夜通しやったりもします。逆に何もないときは子供と一緒に20時くらいに寝ることもあります。

いちげ氏の一日

週3回、息子の保育園がある日は、8時に起きて8時半に送り届けます。それから夕方のお迎えに行く16時半頃まで仕事をして、 夕飯を食べてお風呂に入れ終る19時くらいまでが僕の子育てパートです。それからまた仕事をします。最近は、ブロギルやいちげ氏サロンで頻繁にラジオをするので、22時くらいからはラジオの時間になっています。

その辺、奥さんがどう思っているのか聞きたい!

ラジオは趣味と実益

どうも、いちげ氏嫁です。夜の22時ですから、基本的に子供を寝かしつけている横でラジオで話しているんです…そしたら腹立たしいことこの上ないですよね(笑)

いい加減にしなさいよと(笑)。それでケンカになったりしないんですか?

ケンカにはならないですが…怒られます(苦笑)

でも、怒られながらもやっているということは、いちげ氏として何かラジオに託す想いや目的があるんですか?

ブロギル内でラジオをすることが、人のつながりを生んだり、オンライン上のお仕事も生んだりと、営業にもなっています。Twitterのインフルエンサーさんがラジオを聞きにサロンを訪れてくれたり、他のオンラインサロンの方とコラボしたりも出来ます。実際、ラジオでコラボしたサロンから、いちげ氏サロンに来てくれる新規メンバーが結構多いんです。もちろん、趣味として自分が楽しいのもあります。ただ、以前はほぼ毎日やっていて、ちょっとやり過ぎだったので、バランスを取っていきたいと思っています。

フリーランスと時間

我が家もそうですが、お二人とも小さなお子さんがいらっしゃるので、子育てしつつフリーランスで働くために、時間の使い方をそれぞれ工夫されていますね。夫婦で子供を受け渡したり、家事と仕事をうまく分担したり。フリーランスだと、時間の使い方を自分で管理出来る良さがある反面、仕事と家庭の時間を自分でしっかり管理しなくちゃいけませんよね。

そうそう!フリーランスって“向き不向き”があると思います。人と会わないと不安になったり、「仕事がなくなったらどうしよう…」と不安になる人は、あまり向いていないです。僕の場合は、一人で家にこもって仕事をしても全く不安を感じないタイプなので、すごくフリーランス向きなんです。そもそも、東京時代の満員電車に往復3時間揺られるという地獄の日々から抜け出せただけで、僕にとっての最大のストレスがなくなったので、いまは心にも時間にも余裕が持てています。一年中が夏休みで、休みの日に好きなスタイルで仕事をやっているイメージです。

Q2.今後やりたいことは何ですか?

仕事を減らしたい二人

僕は仕事を減らしたい(笑) …と言っても、収入を減らしたい訳ではなくて、効率化を図って収入を維持しつつ仕事量を減らして、「やりたい仕事だけをやれる」という状態にしたい。やりたくない仕事はやりたくない!

全く一緒です(笑)。私も今はすごい件数抱えていて、それぞれに手が抜けないので本当にしんどいです。先月はアポがなかったのは1日だけでした。夫婦でフリーランスになった当初は「稼がなきゃ!」と肩に力が入っていたんですけど、1年が経った今は、ゆっくりしながらも稼げる方法を考えたいと思っています。

春菜さんは情報発信の継続支援

ちまたのHP制作会社は、HPを作ったらそれで終わりという所も多いんです。さらに依頼する側も「HPを作りさえすれば集客が増える」と、期待し過ぎている人が多いんです。ところが、やっぱり“日々の更新”が大事なので、情報発信の継続支援をやっていきたいんです。いまも既にやっているんですけど、facebookなどの情報発信が苦手な方に、「手伝うから止まらずに発信していこう!」という提案を、これまで以上にやって行きたいと思っています。それにこの方法は、月額で決まった収益になる点もありがたいです。

それいいよね!

私はやっぱり“人の宣伝”をするのがスゴく好きなんです。良いお店ほど発信力が無いところが多いので、その代わりにやって行きたいんです。

FMラジオに進出するいちげ氏

実はNHK-FMの岡田留美さんというパーソナリティさんに、『ラジオまどんな』という番組に「月一くらいで出演しませんか?」というオファーを頂いています。その方は、いちげ氏を情報源に使ってくれているので、「愛媛には発信力のあるインフルエンサーさんが結構いるでんすよ」という話を、世間にもっと紹介していきたいと思っています。今日会場に来てくれている“ななえもん” にも電話出演して貰いたいと考えているし、春菜さんにもぜひラジオに出演して貰ったり、ゲストとして呼ばれるように紹介したいなと思っています。今後はそういう感じで色々と絡んでいけたら。

ぜひぜひ(O^─^)

Q3.逆に見直していきたいことは何ですか?

松野町から内子町へ引っ越したこともあって、その頃は新しいクライアントをみつけるために営業活動をかなりやったんですよ。ただちょっと安請け合いし過ぎたところもあって、今後はお仕事を整理していきたいと思っています。

ん~、私の場合は何ですかね~?(旦那さんに尋ねる)

どうも、春菜の旦那のボン主夫です。せいかつ編集室のマネージャーをしています。見直して貰いたいのは、“お付き合いの仕方”ですね。打ち合わせに行ったら、一件で2時間や3時間も相談に乗ってしまうんですよ。でも、僕はマネージャーとして売上に対する時給を計算しているので、時間にお金が発生しているという感覚を意識して欲しいですね。

私はメッチャ相談を受けることが多くて、仕事を貰っていないのに気付いたら相談されている…というようなことがしょっちゅうあるんです。親しいお友達とお食事に行くのは普通に楽しいから良いのですが、全然つながりが薄いような人からも、「お茶しませんか?」と誘われて、行ってみたら経営やデザインの相談をされることも度々あります。「ここからは有料です」と言えたらいいですけど、それも難しいですし、最近ではなるべくそういうお誘いはお断りするようにしています。あと、お仕事だけのつながりの飲み会なんかも多くて、旦那さんに子守を任せて飲み会やランチに行かないといけないことが多いので、見直していきたいです。

僕は特に、「これを見直そう」ということはないですね。逆に、「これをやろう」ということもないです。いまは「来た流れだけに乗る」という生き方を試しているところなので。

Q4.コネがない場合、営業活動はどうしますか?

「一緒に仕事をしたい人」に声を掛ける

去年の5月に『せいかつクリエイト』というWEBマガジンを立ち上げた時に、これからは「好きな人・一緒に仕事したい人に営業をかける」と決めました。実のところ、現在は営業をかけなくても仕事が来る状態なので、営業しなくてもやっていけるんです。でも、そういう仕事は本当に自分がやりたい仕事と違うことも多いので、今は「この人と仕事をしたい」とか「この人と長く一緒にいたい」と思える人に、自分から声をかけるように心掛けています。

作品が最大の営業ツールとなる

松野町に移住したときには、僕もコネがないところから始まっています。当初は行政の方に、「僕はデザインが出来ます」とか、「イラストが描けます」とか口で伝えていましたが、「へー」って言われるだけであまり理解して貰えませんでした。でも、五ツ鹿踊りという地域の伝統芸能の踊りをキャラクター化して、五ツ鹿ポストカードっていうのを作ったら、「こういうことが出来るんですね!」ってようやく認識して貰えるようになりました。趣味で作ったポストカードが、最大の営業ツールになったんです。

〈 いちげ氏が制作した五ツ鹿ポストカード。 〉

それはつまり、どういうことでしょう?

自分が「こういうことが出来ます」「こういうことが好きです」「こういう仕事を下さい」ということを、まず外に向かって言わないといけません。基本的に、受け身でいても仕事は来ないので。ちゃんと、「私は仕事を求めています」ということをアピールすることが最低限必要です。受け身でいても仕事が来る人は、営業が必要ない人なんです。

付き合いの長い友人であっても、意外とその人がどういうことが出来るかを知らないことって多いですよね。「○○さん、実はこんなことも出来たんですね!」ということが、よくあるように思います。だから、自分が出来ることを発信することは大事ですね。ただ一方で、「どんな方でも、どんな仕事でも来て下さい!」いう訳ではないのだと思いますが?

そうですね。でも最初は良いんですよ。僕がアイキャッチデザインを3千円で始めた時みたいに、とりあえず実績を積むことを優先する時期も、活動初期には必要です。そして、その実績をTwitterなどで「こういう仕事をやらせて貰いました」という形で発信するんです。そうすると、「あ、実際にこうやって仕事を頼む人がいて、この人はこういうことが出来るんだ。」って世の中に認知して貰えるので、それが一番営業になると思います。

Q5.初めてお仕事を頂くクライアントさんのイメージを汲む時に、工夫していることは?

相性が大事

デザイナーさんとクライアントさんには、《相性》っていうのがあるんですよ。僕も相性が良いクライアントさんの場合は、さほどヒヤリングしなくてもイメージがつかめるし、出来上がった成果品に対して先方も、「こういうのが欲しかったんです」という感じになるんです。逆の場合は、何度ヒヤリングしてもお互いにピンとこなかったりします。

私も同感です。あとテクニックとして、パンフレットやチラシ系の仕事をするときは、「好きな雑誌は何ですか?」と聞いて見たり、自分がコレクションしているチラシや過去の作品をお見せして、「この中でどのテイストが好きですか?」と尋ねたりします。

僕は、「感性の合うお客さんと仕事をしたい」と思ったりするんですが、イメージを共有できないお客さんと仕事をするのは苦じゃないですか?

さっき話した“情報発信”のお仕事の場合は、自分と感性が似ていないお客さんの方が多い可能性が高いんです。ただ、私はライターなので「どんなタイプの方が来ても対応する」というスタンスでいます。これまでも、いろんな人と話す機会が多くて耐性が身に付いているので、苦手系の人ともちゃんとやりたいと思っています。逆に、“デザイン”のお仕事の場合は、感性の合わないお客さんとはやりたくないです。「じゃあ違う人にどうぞ」って思います

Q6.原稿の校正回数は何回くらいですか?

構成はお互いの責任共有

決めた方が良いと思うけど、厳密には決めていません。お客さんによって様々です。ただ、「ちょっとややこしいかな?」と感じる方には、最初に予防線を張ったり、ちょっと高めに見積りを出したりします。やはり手戻りがあると時間を取られるので。

逆に、理想の校正回数ってありますか?

2~3回ですね。何にもないのもちょっと怖い(笑)

同じく2~3回ですね。クライアントさんが校正をしてくれて、「ここだけ直して下さい」というやりとりの中で何が行われているかというと、実は《責任の共有》が行われているんです。「お互いにちゃんと確認をしましたね。では入稿しましょう。」っていう感じで。だから、校正が0回だと責任が全部クリエイター側に来てしまうことになります。

Q7.愛媛のイケている所と、イケてない所は?

僕は東京から移住して来たので、よそ者の目線で『雑誌とんとん』に愛媛のオススメのところを紹介しています。その筆頭が《そうめん流し》です。愛媛の場合は、山の中に本格的な施設を構えて、天然水で流しそうめんをやっている場所が沢山ありますが、都会から来ると非常に魅力的に映ります。 調べてみましたが、全国的にこんなところは他にありません。愛媛の人にとっては当たり前過ぎて、外に向かって全然PRしていませんが、うまくPRすれば都会から観光客を呼べると思います。

あと、食材天国でやばい!フルーツの種類と量、一年を通してのクオリティが半端ない!それに宇和海のお魚。産直系のスーパーに行くと、基本的に肉も魚も野菜も全部地元産だけど、都会だとそうはいかない。東京で売ってる安い野菜はほとんど中国などの外国産なんですよ。それが、愛媛に住むだけで地物の野菜がしかも安く買える。砥部町にある『エキサイトスーパーTANAKA』というお店なんかは、「買い物をした方は無料で持って帰って良いですよ」という新鮮な野菜が山盛りあったりする。食材は素晴らしい。

“イケてる所”は、都会と比べて飲食店のクオリティが高いこと。東京から来た人が「愛媛ヤバい!」って言ってるんですけど、愛媛の人は気付いていないので、伝えて行きたいという想いがあります。あと“イケてない所”は、みんな人気店が好きで、「流行っているから行こう」という感じなこと。口コミや宣伝力があるお店にばかりが流行って、同じレベルのお店でもPRが苦手なお店は見向きもされません。だから私はそちら側の見方になりたいと思って仕事をしています。自分の目とか舌の感覚を信じて動く人が少ないのかな?だから、私が発信することで変えていきたい。あと、お金の使い方がおかしいと思う。ちょっと高くなるとみんな買わない。愛媛でパンやカフェが流行っている理由は、数百円で楽しめる娯楽だからと言われています。私が『せいかつクリエイト』で発信している下着屋さんは、下着だけで1万円超えたりするけど、その分とても質が高いんです。そういう“高くても良い物”にお金を使う意識が低いと感じています。

いちげ氏と同じく、“イケてる所”は「食べ物が美味しくて自然がいっぱい」という所を挙げます。日々食べる食材が美味くて安いというは凄いです。大阪で食べていた鰹と、愛媛で食べる鰹は全く別物です。“イケてない所”…というのが適切な言葉か分かりませんが、知識層の人材不足をどうにかしないといけないと思っています。愛媛県を始め四国などの地方部では、大学などの高等教育機関が少ないため、勉強できる人ほど都会に吸い上げられてしまうという問題が起こっています。知識層の人材不足により、せっかくの豊かな素材や自然環境といった地域の魅力が、都市の企業に食い物にされたり、安易な開発で失われたりしています。地域の中で人材の層のバランスが取れることが大事だと思います。

僕も同意見なんですけど、逆に僕が東京から来てここでフリーランスとして通用している最大の原因も、その環境に起因しています。僕レベルの提案を斬新と感じて貰えたり、有効だと思って貰えるのは、正にいま店主が言った環境だからこそです。デザイナーさんの数が少なすぎて、競合しないんです。愛媛に限らず地方部には“知識層不足”という現象が起こってはいますが、その代わり東京に集められた予算が分配されて降ってきます。その降り方や使い方がいびつなので、改善すべき点は山ほどあると思っています。

世の中のお金の流れや全体像を、一市民レベルでも何となく把握できるのは、田舎の良いところだと思います、あと、行政と距離が近くて個人レベルで比較的大きな仕事が出来たりするのも田舎の利点ではないでしょうか。

そうですね。もし僕が東京で働いたら、今みたいに面白い仕事って全然出来ないと思います。僕レベルのデザイナーさんやクリエイターさんがゴマンといる世界なので、競合しまくりで仕事の取り合いになります。なおかつ、大手広告代理店が主な仕事を取り仕切っているので、 大きな仕事や面白い仕事ほど、下請けにならざるを得ないのが東京なんです。よほどネームバリューのある有名人でなければ、発言権すらありません。面白い仕事を個人の小さいレベルやりたいと思っているクリエイターさんには、地方のこういった競合のいない世界は天国なんです。

Q8.ちゃんと儲かっていますか?

ちゃんと儲かってます。

(大木家代打:ボン主夫)それなりにやっていけてます。

お店のお客さんにも良く聞かれますが、この山の上で商店を…しかもオーガニック食品売って…って儲かる訳がない(笑)。でも、このお店は単純に商売だけではやっている訳ではなくて、移住のきかっけや場作りを見据えて運営しているので、将来に向けた先行投資だと思っています。

Q9.黒歴史を教えて下さい。

私は中学生のときがヤバかった(笑)。小学校が超田舎だったんで、中学校に入って人が多い環境に恐怖を感じてしまって、全然しゃべれなくて…。そんな時にオタク活動にハマって、同人誌を作ったりコミケに行ったりしていたので、 学校では暗いオタクの人という立ち位置でした。当時“一ノ瀬うめ”というペンネームで活動していたんですが、手紙が毎日実家に届いて「“一ノ瀬うめ”って誰?」って親に聞かれてました(笑)あと、エヴァンゲリオンの制服とかを普通に縫ったりしてました(笑)ヤバいですね。

僕は高校生の時がうつのピークで、結構大変でした。親ともしゃべれないような状態が2年ほど続いて…。割りとその時期にうつになると大変で、復帰できない人も沢山いると思います。僕の場合は、大学受験のために予備校に通い始めたのをきっかけに、良いタイミングで新しい環境を手に入れられたので、自力でリハビリして復活しました。ただ最近は、30代や40代でうつになって会社をお休みする人も多いと聞きますが、会社勤めでうつになるとキツいだろうなと思いますね。

僕もここ2年くらい、実は精神的にかなり参ってました。というのも、地元に計画されている風車の反対活動の代表をやっていて、自治会の腐敗とか、政治や利権絡みのすったもんだにずっと晒されていて、ドロドロしたものを浴びまくって疲れちゃいまして…。病院に行ったらうつと診断されてたかもしれません。ただ、辛い期間を過ごしはしたけど、それと引き換えにいろんな学びや気付きもあったので、経験しなければ良かったとは思っていません。そこで潰れちゃいさえしなければ、あとの人生に必ずプラスになると感じています。いちげ氏も高校時代苦労されたと思いますが、「それがあるから今がある」という感じじゃないですか?

そうですね。高校のときにうつになって復帰できたおかげで、僕は人生に対してすごく開き直れたんですよ。自分が大したことがないんだということが、理解できた。「たかが自分」という自分を手に入れられたのが、非常に大きかったです。自分への幻想を取り払うことが出来て、リアルな自分に向き合って、「大したことない市毛という人間が何をやろうが、別に誰から注目を浴びる訳でもないし、人に迷惑さえ掛けなければ、自分が好きなように勝手に生きても大丈夫だ。」と開き直れました。

その「自分が大したことないな」って気付くのって、実はすごく大切だと思うんです。私の小学校は同級生が6人の小さな学校で、その中で一番勉強が出来たんです。“僻地優良児童”で表彰されたりして、「自分ってすごいんだ!」って勘違いしちゃったんです。でも、中学校に上がったら周りのレベルが全然違うという現実に触れて「私は全然ダメだな」って思いました。絵も上手いと言われ続けてきたんですけど、部活動でメチャクチャ上手い子に出会って、そこから絵の仕事では絶対に職に就けないと思って諦めました。高校は地元の学校に進学したんですが、当時「名前を書いたら受かる」と言われていた高校だったので、成績も上の方でした。でもその頃になると段々分かって来て、「私は“お山の大将”なんだ」って気付きました。大学は奇跡的に国立大学に行けたので、その時もすごくもてはやされたんですけど、自分では「これはマグレだな」って分かっていました。私だけ完全に“田舎から来た”って風貌だったんですが、みんなはオシャレでキラキラしてて彼氏がいるのに、私だけバイトばっかりしてるイケてない人という立ち位置で。段々とその繰り返しで分かって来て、私は愛媛の中で活躍出来れば良いかなって思っています。「全国目指していません!」って感じです。

Q10.人生の1冊を教えて下さい。

哲学的な意味での“人生の1冊”ではないですけど、中学生の頃に読んだ大友克洋さんの『AKIRA』が、圧倒的に衝撃でした。《ヴィジュアルの力》というものを、「これでもか!」と見せつけられて、ヴィジュアルの持つパワーを信じさせてくれるきっかけになりました。それに、中学生の自分にそれだけの衝撃を与えてくれることに、凄いなと思いました。初めて『AKIRA』の1巻を読み終わったあと、すぐに2巻を買いに行ったんですよ。そしたら、外に出て目に映った景色が、全て大友克洋のデッサンに見えたんです。世界があのタッチに見えた瞬間…ヤバかったですね。

私は安野モヨコさんという漫画家さんがすごく好きで、安野モヨコさんの書いた『脂肪という名の服を着て』という漫画に衝撃を受けました。主人公がすごく太った女の子で、太っていることで恋愛も生活も上手くいかなくて、「デブな自分がダメなんだ、痩せさえすれば全てがうまくいくんだ」って痩せることに打ち込むストーリーなんです。最終的には無理なダイエットをしてまで痩せるんだけど、痩せてもそこに幸せはなくって、結局また元のデブに戻ってしまうんです。そのラストが衝撃的で、あなたが太るのは「身体じゃなくて、心がデブだからよ」って吐き捨てられて終わるんです。それを読んだときに「あ、これは私のことだな」って思ったんです。表現するのが難しいんですが、今の時点の自分をちゃんと理解して、「自分が変わろうとしなければ人は変わらないんだ」って思ったんです。

なんか…深いですね。

さっきも話したとおり、私の人生って上がったり下がったりを繰り返してるんですけど、その下がっている時の私はきっと、「本来の私はすごく良いのに、みんな分かってくれないだけなんだ」っていう思いが心の中にあったと思うんです。でもこの漫画を読んだときに、「いや違うな、自分だな」って気付いたんです。そこから何だか楽になれたんです。

僕は、自然農法で有名な福岡正信さんの『わら一本の革命』です。サラリーマン時代に読んで衝撃を受けて、脱サラをしていまの田舎暮らしをするきっかけになりました。「人間は自然を知ったつもりになっているが、実は何も知らない」とか、「何もしないということをやることが、唯一人間のなすべきことである」というようなことが説かれていて、農の話を通した哲学書のような本です。当時は残業200時間とかいう働き方だったので、そんな不自然な生き方をしていた自分の目を覚まさせてくれた本でした。ただその反動で、田舎暮らしを始めた頃は人工的なものの否定に行き過ぎてしまったのですが、最近は福岡さん的な生き方も少し違うなと思って、新たな生き方を試みています。間違いなく人生を変えてくれた一冊ではあるけれど、そこから卒業して今は自分の道を歩んでいます。


最後に一言ずつ

僕は以前から、松山のSTROLL(ストロール)さんというお店のロゴが好きだったんですが、今日作品展を見て、それが春菜さんの作品だと知って驚きました。先ほど話じゃないですけど、実はこれまで春菜さんが何をしている人か、ずっとよく分かっていなかったんですけど、今回のトークショーで絡ませて貰って、それが把握出来て非常に良かったです。今後ともよろしくお願いします。

では主役の春菜さん、最後に締めの言葉をお願いします。

普通は展示会というと、「こんなことが出来るんだぞ、どうだ見てくれ!」っていう感じが多いと思いますが、私の場合はちょっと違っています。さっきも言ったように、私は自分のことを凄いとは思っていないので、「こんな私でも仕事を貰えるんだよ☆」という感じのスタンスで展示をつくりました。見た人が「これなら私にも出来るかも」と思って貰えたら良いなと思いながら、制作のやり方や工程を紹介しています。今回は、お二人とトークショーをさせて貰って、私も話しながらすごく自分のことが整理出来ました。こういう機会を作って貰って、また一緒にお付き合い頂いてありがとうございました。


さて、『オンラインでは絶対に言えない話』いかがでしたか?個人的には、いちげ氏の「世界が大友克洋のデッサンに見えた」という話が興味深かったです。読んで頂いた皆さんも、それぞれに感じるものがあったのではないかと思います。よければSNSでも直接でも構わないので、感想を伝えてあげて貰えると、パネリストの方々も喜ばれると思います。では、会場アンケートから感想をいくつか掲載させて頂いて、終わりたいと思いします。皆さまご覧いただきありがとうございました。


アンケートより感想
  • 全部おもしろかった!こんなトークイベントが聞きたかったので、私好みのイベントだった。
  • 愛媛の身近でクリエイティブなトークに触れる機会があまりないので楽しかった。
  • そうめん流しの話が興味深かった。
  • 春菜さんの下積み時代の話が面白かった。
  • 「黒歴史でも良かった」と思えるようになるには、自分次第なんだなぁと気付かされました!
  • うつになって「自分って大したことないな」と開き直れた話が興味深かったです。


『大木春菜の仕事展』の会期中には、もう一つのトークショー「せかクリがやりたいこと」も開催されました。大木春菜さんにご興味のある方はぜひコチラの記事も併せてご覧下さい↓↓↓



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